1)60-100ヌクレオチド(nt)程度の低分子RNAの存在の普遍性および、アンチセンス転写との関連性を解析するため、センス鎖とアンチセンス鎖の重なりを考慮した部分にプローブを設計したマイクロアレイを作製した(約40万プローブ/アレイ)。このマイクロアレイを用い、マウスから抽出した全RNA(未分画のもの)および分画した低分子RNAをターゲットとして解析を行い、有意に低分子RNAのシグナルの高いプローブを選定した。
今後はノーザン解析による低分子RNAの確認を行う予定である。
2)マウスから抽出した低分子RNAについて次世代シークエンサーによって配列解析を行い、新規RNA候補を得ることに成功した。数千にのぼる候補について、読まれた回数、配列情報、cDNAの長さをもとに、実験対象を50種類に絞り込み、それぞれの発現と大きさをノーザン解析により確認することに着手した。
論文発表済み(Okada Y, et al., 2008)のノーザン解析よりすでに発現が確認されている2種類の低分子RNAに関して、ソフトウェアvsfoldによる二次構造の予測結果を指標に発現領域を推定した結果、1つについては2つの候補(P1-1とP1-2)、もう1つについては1つの候補(P2-1)が得られた。
それぞれについて実際にT7 RNAポリメラーゼを用いた試験管内転写法によってRNAを調製し、そのNMRスペクトルを測定した。二次構造の形成を反映するイミノプロトン領域のスペクトルを比較検討した結果、P1-2(89nt)に対してP1-1(81nt)の方がより安定な二次構造を形成していることがわかり、P1-1のRNAが発現している可能性が示唆された。P2-1(97nt)については、二次構造予測によってGC塩基対からなる長いステムの存在が推定されたが、NMRスペクトルの解析によってもGC塩基対からなるステムの形成が確認された。