研究内容
樹木細胞壁がビルトアップされる仕組みの解明
植物の細胞壁の中には、セルロースとよばれる非常に長い分子が束状になって埋め込まれています。このセルロースこそ、C, H, Oからなる分子で、力に対して非常に強い性質を示します。樹木の細胞壁は厚く、その中にこのセルロース分子がきれいに整って埋め込まれていて、繊維強化材料のような構造をしています。これこそが、大きな樹木の体を支える大事な構造です。しかし、この精緻な構造が作られる仕組みは、じつはまだよく分かっていません。この研究では、特に微小管とよばれる細胞内の繊維状の構造体と、それに関係するタンパク質に注目して、解明を進めています。
樹木が長くその体を支える仕組みの解明
樹木は動くことができず、一ヶ所で生育します。その長い生育の過程で、周囲の様々な環境の影響を受け、ときには強い風や大雪など過酷な気象条件にさらされることもあります。しかし、樹木は簡単には倒れず、耐えて長く生きていきます。また、何らかの影響で幹を曲げられてしまっても、矯正し、より多くの光を求めて上方に伸びていきます。樹木は成長とともに自ら重くなっていきますから、当然ながら、その重さを支えていく必要もあります。樹木は、内外から受ける「力」と上手に付きあい、それに適応する「かたち」を作っていると予想されます。樹木は幹や枝を矯正する過程で、細かな構造が変化している細胞壁を作ります。この現象にヒントがあると考え、分子レベルでの解明を進めています。
DNAで木の種類を正確に識別する技術の確立
木は、身近なところで大事な材料として使われています。家の中を見れば、柱や梁、椅子にテーブル、お箸、また楽器にも使われています。日本は木の文化を大事にする国ですから、伝統工芸や、神社・仏閣、貴重な文化財にも木製のものが多くあります。良いものを見つけると、それはどこから来たのか由来を知りたくなるものですが、良質な木製品や木製文化財についても、同じことが求められています。でも、目視で木の由来を見分けるのは、ほとんど不可能です。そこで、木の中にわずかに残っているDNAを取り出して識別に使えないか、技術的な検討をしています。DNAには個体に固有の情報が含まれていますから、これを使えば、より科学的に木材を識別できると考えています。